九州の知財について思うこと
鹿児島県は特徴ある特産品や最先端の技術力を数多く有しているにも関わらず、残念ながら知的財産権の保有件数が全国でもワースト?にあります。
それはなぜか? 考えると本当に難しい問題です。
一つは、知財の専門家である我々弁理士の努力不足が挙げられるでしょう。しかし、その前に「弁理士」そのものへの認識も惨憺たるものと思われます。特に九州・沖縄地区は全国の弁理士数の約1%しかいません。ましてや、九州・沖縄地区に存在する大都市圏の事務所(サテライトオフィス)ではなく、地域密着型の特許事務所となれば対応できる弁理士数は更に少なくなり、鹿児島県となれば・・・というのが現状です。ところが、現状の知的財産権の保有件数から逆算すると鹿児島県の弁理士数は多すぎるということになってしまい、話が終わってしまいます。これは、既に飽和状態であることを意味しているのか? いいえ、弊所はそうは考えておりません。
また、一つは、大企業が少ないのも要因として挙げられます。しかし、全国のここ数年の傾向では中小企業の知財保有件数は少しづつ増加し、大企業では防衛的な出願を控える等で減少傾向にあります。大都市圏近傍の地方都市では地方創生の流れにより中小企業の変革が見られ始めていますが、九州においては福岡県以外の他県ではまだそのような状況にはないようです。
また、一つは、知的財産権を活用するメリットを身近に感じられる例が少ないことによる認識不足が挙げられます。これは、上述した我々弁理士の努力不足と密接に関係しますが、根が深い問題だと感じます。
このように、鹿児島県の知的財産権の保有件数が少ない理由は色々と考えられるのですが、解決策を議論すると「卵が先かニワトリが先か」と言った話になってしまいます。そもそも解決する必要性を感じることもないかもしれません。
しかし、一方では知的財産権をうまく事業に取り入れて、他社が参入できない独自技術を活かした差別化を図ったり、興味を引くユニークなネーミングやロゴを商品やサービスに付したブランド戦略等により、中小企業であっても多大な収益を上げ、事業の安定化、社会的信頼性の向上を同時に達成している例はいくらでもあります。
この差は一体何なのか?
結局は、知的財産権に関する知識不足、情報不足といった認識の低さが根本にあるためだと思います。
従いまして、弊所は、知財の力で地方創生を支援するための方策として、知的財産権を理解して頂く事を第一とし、そのための一つとして知財セミナーも準備しており、共に協力しながら有益な権利取得を目指していく所存です。
2016年4月1日 弁理士 森田 海幹